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顔面偏差値の高い「祝福組」になれなかった少女の物語『くらやみガールズトーク』(朱野帰子)

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どうも、tamaminaoです。

ようやく緊急事態宣言があけましたね。私はいつも通り近所の本屋に出かけ、後は家の中でまったり読書をして過ごしました。相変わらずのインドア派です。

今日は本日読了した『くらやみガールズトーク』朱野帰子(角川書店)を紹介したいと思います。朱野帰子(あけのかえるこ)さんといえばドラマ化された『わたし、定時で帰ります。』が有名。こちらのタイトルで、「ああ」となる方も多いかも知れません。

 

『くらやみガールズトーク』は8つのお話が入った短編集。女子の生きにくさをシュールに描いた作品が多いのですが、ものすごく気に入った一遍「変わるために死にゆくあなたへ」を紹介したいと思います。

 

制服は顔の良し悪しを際立たせるアイテム

主人公の陽菜(ひな)は、「年寄りのような下がり眉。吊り上がった細い目。寝不足でもないのに、腫れぼったいまぶた。芝生みたいに短い睫毛。ダンゴ鼻。ニキビをつぶした頬。平安時代のような薄い唇」という容姿の持ち主。

「恋愛なんかしなくても幸せになれるわよ」などと周囲の大人から言われて育ちますが、中学校入学時までは、「自分たちにはそれぞれ違う魅力があると思って」きました。

しかし、全員が同じ制服というものを身に着ける環境となったとき、陽菜は、顔の良し悪しがことさら際立つことに気づきます。

ブロード生地のブレザーとスカートを着せられた途端、陽菜たちは同じになってしまった。(中略)その顔の違いを審査するために、制服があるように陽菜には思えた。これはなんて残酷な!

「神から祝福された顔を持った者たち」(祝福組)と「そうではない者たち」の差は埋められなくなっていき、「自分たちが同じことをしようものなら笑われる。同じ人間でもやっていいことと悪いことが違うのだ」と感じるようになるのです。

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「祝福組」とそうでない組の残酷な差異

「祝福組」という表現がとにかくもう秀逸。「神から祝福された顔を持った者たち」は、さらにおしゃれをして素敵になっていき、係決めで「やりたい!」と手を挙げるのも、「だるい」と机に突っ伏すのも許され、祝福組女子と祝福組男子はつるんだり戯れたり青春を謳歌します。

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一方でそうでない組はそうでない組で集まるしかなく、陽菜も、入学式当日の教室で、「チョウチンアンコウみたいな顔筋の女子に声をかけられ」、自分もそちら側だという事実に気づかされます。

「選ぶ権利などないのだ。生まれた時にもう決まっていた」と陽菜は思いますが、どうしてもあきらめれないのは「恋」で、「そうでない組女子はそうでない組男子に恋をする」と決まっていればいいものを、同じクラスにいる祝福組男子を「いいな」と思ってしまいます。

冷徹なほどシビアな視線で自身の顔の良し悪しや、そうでない組には許されない行動パターンを見通している陽菜ですが、それらをすべて越えて彼女が最後に選び取る行動がまた面白い。是非この一篇だけでも読んでみてほしいです。

 

うちの母は超絶祝福組

以前こちらで書きましたが、私の母は「ミスコン」レベルの祝福組で、その祝福を引き継げなかった私は、子どもの頃から、いつもいつも「お母さんに似てないね」「お父さんと同じ顔してるね」などと揶揄されてきました。

 

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女子の場合、顔の良し悪しと言うのは、化粧や髪型や服装で相当のところ、ごまかすことができますが、化けることのできない小中高時代は、生まれ持った見た目一択。つまり才能オンリー!! 努力の入りこむ隙は一切ないわけで、自身ではどうにもならないことで得したり損したり差別されるって…相当きついことですよね。

 

男子の「そうでない組」は才能でモテを手に入れる

ジャーニーズや韓流などを見ていると、男子も祝福組に幸多いようには見えますが、女子に比べると、仕事・才能・お金という別な価値観が、年を取るほどにモテ要素に加わってくる気がします。

つまり、男性の場合は、努力や才能によって、そうでない組でも、祝福組よりよっぽどモテる男になれる可能性があるんじゃないかと。

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才能でモテまくった哲学者サルトル

「才能でモテた」事例で思い浮かぶのは哲学者のサルトル。彼は強度の斜視な上に背も低く、「私は醜い」と外見的なコンプレックスに悩み続けるのですが、大人になってからは超美人ボーヴァワールと交際し、しかも同時進行で他の女性からもモテ続けます。まさに、その才能で祝福組よりモテる自分を作り上げた典型例だと思うんです。

 

 

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女性版サルトルは難しい

しかし、ちょっと考えてみてほしいのですが、サルトルが醜さに悩む女性だった場合、超絶イケメン男子がその才能に惚れて交際してくれるかと言うと…なかなか難しいんじゃないかと。しかも、他の男子たちからもその才能故にモテまくり、となると、女性の場合はほとんど聞いたことがない気がします。

「そうでない組」の女子は、仕事・才能・お金を手に入れたとしても、ずーっと「そうでない」という部分で評価され、貶められるような気がするんです。失礼ですが、作家の林真理子さんなどはその典型例だと思います。

彼女がもし男性だったら、絶対モテモテでしょう。自分より一回り若い祝福組女子を引き連れてデートしまくれるポジションだと思うのです。でも、林真理子さんは女性ですから、祝福組男子からモテモテ、とはならないですよね。

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最後に

女性の見た目や生き方については、どうも書きたいことがいっぱいですが(^▽^;) 長くなりますので、本日はここらへんで。同じテーマの本としては『ブスのマーケティング戦略』(田村麻美)も超おすすめ。『くらやみガールズトーク』とあわせてお読みくださいませ。

 

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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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