明けましておめでとうございます。
2023年もどうぞよろしくお願いします!✨✨
相変わらず不定期更新になっているブログですが、読書量は絶好調で、お正月から既に7冊ほどを読了しました。その中で心に残った1冊、『おいしいごはんが食べられますように』(高瀬隼子)を今日は紹介します。前年度、第167回芥川賞受賞作です。
弱さと甘えを許される芦川さん
心がざわざわする小説でした。正直、どの主人公のことも好きになれなかったけれど、読み終えてみると、ぐるぐる色々なことを考えてしまう自分がいました。
なぜか。その理由は、登場人物の1人である芦川さんと言う女性の存在。
彼女は、頭痛等の理由でしょっちゅう仕事を早退、欠勤します。「予定外のことが苦手」、ハラスメントにあったことがあり声の大きい男性が得意じゃない、等の理由で、暗黙の了解で面倒な仕事からは外されています。部署のメンバーが全員残業しているときにも、彼女は先に帰ることが許されています。
芦川さん自身も、その弱さに立脚して、周りから庇護されることを自分の立ち位置としている人。
手作りのお菓子を毎日会社に持ってきて配るなど、気遣いのできる善意の人というポジションを固め、お菓子の配布が好意の押し付けでもあることを誰も口にできない雰囲気を作り上げています。
か弱い彼女に強く言ったり注意をしたりするのは、する側が悪者。
パワハラ、モラハラなどが声高に言われる現在の風潮の中では、芦川さんのような人に物申すのは一層難しくなっており、その分、ストレスを被る人が出てきます。
職場で「我慢する人」というポジション
芦川さんの後輩である押尾さんは、学生時代にチアリーダーに所属し、無理を押してでも頑張ってしまうタイプ。そんな彼女は、芦川さんのことを苦手に感じています。
自分の仕事で残業するのと、他人の仕事で残業するのはなんか違う。違うっていうのはしんどさが。(中略)どこに行ったって芦川さんのような人はいること、その人たちと一緒に働く日々が続くこと、あと何日、何時間、肩代わりする仕事があるんだろうということ。
体調が悪いなら帰るべきで、元気な人が仕事をすればいいと言うけれど、それって限られた回数で、お互いさまの時だけ頷けるルールのはずだ。結局我慢する人とできる人とで世界がまわっていく。
働いたことのある人なら、誰でも覚えのある感情ではないでしょうか。職場には色々な人がいて、芦川さんタイプから仕事がまわってきても、「具合が悪いならしょうがないね」と大きな度量でこなす「神」のような人もいます。
でも、多くの人はそうではなくて、押尾さんのように「不公平」を感じ、これが続くととんでもないストレスになります。
しかし…私自身は、身体も心も弱いことに安住している芦川さんの気持ちも痛いほどわかるのです。
元来、自分が子どものときの病気のせいで、身体の弱い人間なので。会社で働き始めてからも、体調のことで周囲に迷惑をかけることがよくありました。
弱い人も普通の人も強い人も、みな働かなくてはならない
押尾さんのような人から見ると、なぜもっと自分に負荷をかけられないのか、無理をしてでも周囲に負担をかけないように振る舞えないのか、と思うのでしょう。
でも、そこには、他人からは計り知れない身体や心の痛みがあり、押尾さんのできる我慢と芦川さんのできる我慢は…残念ながら一緒では無いんですよね。
弱い人・普通の人・強い人。
能力の低い人・普通の人・高い人。
どんな人も生きていくためには働かなくてはならない。誰かにとってはラクチンでも、誰かにとっては死ぬほどつらい仕事かも知れない。
互いに助け合えたら一番よいのに、
ぶらさがる弱さを「自己責任」として許さない空気と、
昨今のハラスメント問題でぶらさがる人を糾弾してはならないという空気
この2つががせめぎ合って、実に窮屈になっているのを感じます。
『おいしいごはんが食べられますように』は、そんな現代の空気感をとてもうまく描いている1冊。
まさに令和版「お仕事小説」。
最後になりましたが、もう一人の登場人物二谷のことをほとんど書かなかったのですが、彼はこの空気感とは別の意味でヤバい(^▽^;) そこにも注目して読んでみてください。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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