どうも、tamaminaoです。
家の中の本溜まりが激しく、部屋が荒れています。そのため「ハードカバーは図書館で借りる」という掟を自分に課していたのですが、新しい本はなかなか来ないし、自分の読みたい本が入るとも限らない。結局は今回も読みたい欲に負けて購入してしまいました。私の好きな作家、吉川トリコさんの『余命一年、男をかう』(講談社)です。
節約とお金を貯めることが趣味のアラフォー主人公
40歳独身の主人公片倉唯は、節約とお金を貯めることが趣味。1日の終わりに資産管理アプリで資産総額を確認することが生きがいです。
毎日地味な茶色のお弁当を持って出勤し、外食や飲み会、旅行、おしゃれ、に時間やお金を遣うことは皆無。会社では「貧乏くさい節約飯を持参する行き遅れの可哀そうな女子事務員」とみなされ、同じ40代の同僚(既婚)からは「何が楽しくて生きてるの?」と言われています。
ご祝儀を払いたくないから、と友人の結婚式への参加を断るなど、その守銭奴、ケチぶりは相当なもので、20歳で購入したマンションで、趣味のキルトを作って日々地味に過ごしています。すべては平和な老後のため。しかし、そんなある日、彼女は癌を告げられます。しかも、余命1年、長くて2~3年だと。
告知を受けた日、病院内でピンク色の髪をしたホストから、突然お金の無心をされた唯は、それにOKすると同時に、ホテルへと誘い、貯め込んでいたお金で男を買う(飼う)ことになるのですが…。
若く美しい妻は、成功した男性に与えられるご褒美
ちょっと話がずれますが、若く美しい女子が、うんと年上のお金持ちと結婚する、なんて非常によくある話ですよね。ドンファンとか( ´艸`) お金さえ持っていれば、父親くらい年上だろうと白馬の王子様。お金の前には見た目なんてどうでもよくなります。
しかも明らかにお金のための結婚であっても、女性が美女でさえあれば、男性側は周囲から羨ましがられます。「トロフィーワイフ」なんて言葉もあるくらいですから。
トロフィーワイフ/社会的に成功した男性が自らの成功を誇示するために若くて魅力的な美女と結婚すること。美人妻は成功の証としてもらえる「トロフィー」なわけです。
「トロフィーワイフ」ならぬ「トロフィーダーリン」
『余命一年 男を飼う』は、この逆バージョンです。「余命」が絡むし、もっと色々複雑なのですが…単純化すると、しこたまお金を持っているアラフォーが、お金の悩みを抱えている美貌と若さ(31歳と言う微妙さですが)のある若い男子をお金で釣る、っていう話しなんですよね。「トロフィーワイフ」の逆バージョン、「トロフィーダーリン」ですかね。まぁ、この言葉が日本で使われることはないかも知れませんが。
「専業主婦は家政婦であり売春婦である」
すいません! ここから少しだけネタバレになります!!!
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この小説の中に、「専業主婦は家政婦であり売春婦である」という言葉が出てきます。少し前のフェミニストたちがよく口にしていたワードと思います。主人公の唯は学生時代に女の先生から教わったこの言葉を思い出し、結婚の本質が「お金のために男と契約」することであるなら、その逆も成立するだろう、と考えます。
つまり、「金で夫を買えばいい」「男娼であり介護人であり、看取りと死後処理までこなしてくれる便利な男型ロボットを」雇おう、と考えるわけです。
そして、実際に、ホストの瀬名に対して札束で引っぱたくような誘いをかけます。
お金目当ての結婚は持続するのか
この本を読み終わってから、ちょっと興味があって「結婚」「金目当て」等で検索したところ( ´艸`)、体験談や悩みそ相談等色々出てきました。
生活のためにかなりの年上と再婚したけれど夜の生活が苦痛、とか、金持ちと結婚予定だけど本当に好きな相手(貧乏)は別にいる、とか。
結婚=お金のために契約、と割り切った人たちだと思うのですが、いざ仕事(結婚)が始まってみたら、「このお仕事あいませんでした」「副業としてつなぎますが別に本業(本彼・彼女)持ちます」っていう話しなわけです(^▽^;)
思うに、お金という報酬だけではこなしきれないタスクが、結婚生活には多いのでしょうね。人が素に戻る場所での、会話やコミュニケーション、夜の生活、病気の際の看病や介護等々。しかも、相手側も同じく雇用関係的な結婚であると思っていればよいですが、大抵の場合は愛情婚だと信じているわけで(割り切っていたドンファンってある意味すごいですね)、そうなるとタスクの中には、愛あるようにふるまう、という難題も入ってきます。これがきついのかも知れないですね。
唯は、結婚生活にまつわるこれらのことを、ごまかし一切なくお金で買おうとするのですが、うまく行くのか、いかないのか。それは、ぜひ本を読んで確かめてみてほしいです。私的には、愛あるようにごまかして実は契約婚をしているタイプよりは、不器用かつ破壊的な唯の方に好感を持ちます。
コロナ禍後の作品でもあり、ホスト等夜のお仕事の方々がどのような苦境に置かれているかも描かれており、読み手の立場によって顔を変える多層的な作品です。
吉川トリコはR-18文学賞出身
最後に、作者の吉川トリコさんについてご紹介します。彼女は、新潮社が行う「女による女のためのR-18文学賞」出身。この文学賞タイトル、うちの息子(中3)なんかは「Σ(゚∀゚ノ)ノキャー」って感じで大反応なんですが、いやいや、ものすごい賞なんですよ!
吉川トリコさん以外にも、豊島ミホさん、山内マリコさん、彩瀬まるさん、町田そのこさんなど人気作家を次々生み出している注目の文学賞なんです。
誕生からもう20年になるそうですが、当初から私が注目していたのは、「読者賞」を設けているところ。Web上で最終候補作品を公開し、女性読者限定で感想コメントを募集して、読者からの支持が最も多かった作品が「読者賞」となるんです。吉川トリコさんは、大賞と読者賞のダブル受賞でした。
「読者」目線を取り入れた賞を設けているところに、R-18文学賞が人気作家を生み出している理由があるのだろうと、私は思っています。
今後頭角を現すだろう女性作家たちの最初の作品が読める場でもあるので、小説好きの方はぜひ注目してみてください。
『マリー・アントワネットの日記』シリーズもおすすめ
吉川トリコさんの作品は、現代の女子高生口調で綴られる『マリー・アントワネットの日記Rose』『マリー・アントワネットの日記Bleu』 (新潮文庫nex)もおすすめです! 続編の『ベルサイユのゆり』 (新潮文庫nex)はマリー・アントワネットと関わった人たちが、彼女について語っていくのですが、こちらもたまらなく素敵。ぜひ3冊セットで読んでほしいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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