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現役編集者によるおすすめの本や漫画の紹介です。

「悩み相談」コーナーの裏側~編集者が語る回答者の選び方~

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どうも、tamaminaoです。

昔から「悩み相談」コーナーが大好きです。特に新聞の相談欄がお気に入りで、朝新聞を開くと一番最初に読んでしまいます。

朝日新聞を購読していたときは「悩みのるつぼ」、読売新聞では「人生案内」。時間がないときも、この欄だけは欠かさず読んでいます。

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相談内容は軽めのものから、人生を揺るがす深刻なものまでさまざまなわけですが、華は、何といっても回答者がどう答えるか!

回答者は定期的に入れ替わるのですが、これほどにご本人の性格や生き方がにじみ出る文章ってないな、と思うんです。

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最近の読売新聞「人生案内」で好きだった回答者は最相葉月さん。ばさっとぶった切る系の答えが痛快でした。逆に、この人には相談したくないな、って思ったのは、失礼ながら出久根達郎さん。 

そもそもの立脚点が何となくずれていて…えっ、そこ?みたいな回答が多かった気がします。

好きな作家さんだったのですが、悩み相談となると、ことはまた別。まぁ、「ずれ」を抱えていること、世間知がないところが、作家としてはプラスなんてこともあるのかも知れないですが。

www.yomiuri.co.jp

さて、今日は、私自身が編集者として「悩み相談」ページを担当していたときのことを振り返りたいと思います。

 

「悩み相談」は回答者の人選がすべて

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もう10年以上前のことになるのですが、担当雑誌で、「子育て悩み相談」ページを受け持つことになりました。

こういったページを作るときは、読者から相談内容を募集、それに答えてくれる「回答者」「先生」を探す、というのが編集者の最初の仕事になってきます。

そして、やはり重要なのは、この「回答者」「先生」の人選!!! 悩み相談の方向性が、ここにかかっている、と言っても過言ではありません。

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「子育て」というテーマなので、回答者の選び方としては、その分野での肩書や高い見識を持つ方、というのがまずは一つ。もう一方で、肩書はないけれど、経歴的にこの人がアドバイスしたらすごく面白いだろうな、という方、という選択肢もあります。

例をあげると、小児科や児童精神科医が答えるか、元暴走族のトップで現在5人の子持ちのパパが答えるか!

まったく様相が変わってくるのがお分かり頂けるかと思います(^▽^;)

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「相談内容」と「回答」がセットになって作られる世界観

実は、悩み相談欄において、相談内容と回答は一蓮托生。例えば肩書ありの専門系の方が回答者の場合、お悩み内容もその方の専門性が活かされるものを選ぶ、と言う方向性になってきます。

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昔、朝日新聞で連載されていた中島らもさんの「明るい悩み相談」を覚えていらっしゃいますでしょうか? 珍妙で深刻ではない悩みに、らもさんが絶妙に答える、という内容で一世を風靡したのですが、あれなど、まさに相談者と回答者のセット技。

あえての珍妙な質問に、らもさんが「らしく」答える、という共犯関係(言い方悪いですが)によって世界観が確立されていました。ネタ要素が強く、実用面は少なかった部分もあるのですが…悩み相談の非常に面白い好例だと思います!!

www.cataloghouse.co.jp

 

「生き様から哲学を学ぶ」系の回答に舵を切る

で、私が担当した「悩み相談」ページの場合は、編集部で相談の上、専門職の方に回答をお願いすることになりました。結果、間違いのない知識や情報を伝える、というかなり実用的な方向に落ち着き、それはそれで役に立つものだったかと思います。

しかし、私個人としては、回答者の生き様から哲学が学べるタイプの悩み相談もやってみたい気持ちがあり、次クールあたりで、人選を変えることにしました。

「肩書はないけれど、経歴的にこの人がアドバイスしたらすごく面白い」←こっち方向に舵を切ることにしたのです。

ただ、この人選の危ういところは、個性的な方ほど、過激な物言いや偏った考え方を提示してくる可能性もあり…読み物としては面白いですが、あまりに偏ると受け入れられない読者も出てくるかな、と言う部分。

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「穏健派」と「ちょい過激派」の二人をチョイス

そこで、候補者の方の経歴や書かれた物等にさまざま目を通し、悩んだ末、バランスを取る意味もあり、お2人に回答をお願いしました。私の中では「穏やか系」と「ちょい過激系」という人選でした(≧∇≦)

で、いざ届いたお悩み相談をいくつかピックアップして、先方に提出。事前に打ち合わせもしたうえで、回答をざっくり書いて頂いたのですが(基本的には編集者がリライトします)……

「穏やか系」と思っていた方が、ほわんと穏やかな文体の中に、ばっさり辛辣な回答を書いてきて! おおっ!こういう人なの!?とびっくり。

逆に、過激系と思っていた方は、ちょい乱暴な側面もありながら、相手の心情や立場に寄り添う姿勢を崩さず、決して否定しない回答をよこしてきました。人間って分からない!

ただ、どちらもお二人がご自身の生き方や哲学の中から出してきた方向性なので、とにかく説得力があって、すごく心に響く!!! 新たな道や考え方を提示してくれる回答になっていて、私自身もとても満足のいく悩み相談ページになったのでした。

 

普段とは違う「顔」が飛び出す、「悩み相談」の回答

私が愛読する「悩み相談」も、回答者の人選に苦慮されている「影の存在」(笑)がいることでしょう。

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やはり選ぶ側としては、悩み相談の回答をするのは初めてで、「おっ。この人が」と読者が新鮮に感じる方にお願いしたいもの。

しかし、そうなってくると、実際にどんな回答をするのかは、蓋を開けて見ないと分からない。「悩み相談」という切り口が独特なのか、私が頼んだお二人のように、普段書かれているものとは違う切り口や考え方を出してくる場合があるんですよね! 良くも悪くも。

あれっ? 狙った方向性と違う…みたいなことが起こるわけです(^▽^;)

まぁ、そこがまた面白いところでもあるのですが。

編集者としても読者としても楽しめる、「悩み相談」は実に奥深く魅力的な企画なのです。

おすすめの「悩み相談」本

さて、今日は、「悩み相談」コーナーの裏側、編集者が回答者をどのように選ぶのか、等について書いてきました。最後に、私のお気に入りの「悩み相談」本を掲載しておきます。

やっぱりオタキングこと、岡田斗司夫さんの悩み相談が私は好きなんです。素晴らしいので、読んだことのない方は是非一読してみください。

 

最近の本もあげておきますと、立ち位置や解釈が面白かったのが燃え殻さんの『相談の森』。さらっと読みやすいです。

 

悩み相談の世界にハマってみたい方はまずは上2冊あたりからいかがでしょう。

詳しいレビューはまた今度書きたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました!

 

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