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人工知能クララが語る、親友ジョジーとの日々。『クララとお日さま』(カズオ・イシグロ)

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どうも、tamaminaoです。

ずっと読みたかったカズオ・イシグロの新作『クララとお日さま』(早川書房)を3連休に読了しました。『わたしを離さないで』(早川書房)も素晴らしかったですが、『クララとお日ひさま』も負けず劣らずの良作でした。

 

 

語り手は人工知能搭載のAF「クララ」

語り手であるクララは、人工知能を搭載したAF(人口親友)。そう、『クララとお日さま』は人工知能が語っていく、という形式の小説なんです。

AFは高い知能とそれぞれ独自の個性を有しており、子どもたちの「親友」としてお世話や教育をする存在です。高価でもあり、それなりに経済力のある家庭でなければ購入はできません。小説は、クララが店舗に並び、購入されることを待つエピソードから始まります。

やがて、店舗にやってきたジョジーという女の子がクララに目を留めます。しばらくの期間待たされた後、親子は再びクララを買いに訪れ、ジョジーのAFとして一緒に暮らすことになるのですが…

 

 

※以下、完全なネタバレではないのですが…小説ラストを想起させる内容も含んでいます!! 知りたくない方は、ここでストップで。

↓↓

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「向上処置」を施される子どもたち

『クララとお日さま』はいわゆるディストピア小説としての一面も持ちます。

ジョジーの家で開催される「交流会」。それは、「向上処置」なるものを受けた子どもとその親の集まりでした。

向上処置を施すことで、子どもたちは高い能力を持つようになり、将来は保証されます。しかし、どうやら、その副作用?で命を落とすケースもあるのです。

「で、親は…やらないと決めたの? 最後の瞬間にひるんだとか?

「最悪の恐怖よね。ここにいる誰にとっても」と近くで落ち着いた声がしました。

処置を受けさせるか、受けさせないかは、親にとって大きな決断となります。

受けさせなかった場合は、「死」という「最悪の恐怖」からは逃れられますが、成功して社会の中枢へ昇っていく子どもと親からは、差別・侮蔑の対象とみなされます。

 

命の危険にさらされるジョジー

ジョジーは母親の決断により向上処置を受けますが、結果、健康を害し、この後生き続けられるのか分からない状態となります。はっきりとは書かれませんが、どうやら彼女の姉サリーも、この処置を受けて亡くなっています。

「きっと元気になりますよ」とミキサーのご婦人が言いました。「絶対よ。あんなことがあってもひるまなかったあなたに、ジョジーはいつかきっと感謝すると思いますよ」

(中略)

「サリーは? サリーもわたしに感謝してくれるかしら?」

もし同じような時代に自分が置かれたとしたら…

我が子が将来社会の底辺におかれる、と分かりながら処置を受けさせずにいられるか。それとも、命をかけた決断と分かりながら、未来のために受けさせてしまうのか。

何となくコロナワクチンのことも思いうかべながら、色々考えさせられました。

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クララの気高さに胸が苦しくなる

クララは、ジョジーのAFとして、持てる能力と力のすべてを使って、病気の彼女に献身を尽くします。クララには徹頭徹尾「自分」というものがありません。自分勝手、自分を守る、等の発想はクララからは出てきようがなく、ただただジョジーと家族のために考え、動き、彼らの要求に自らを捧げます。

何の見返りも報酬も感謝も求めない。ただ与えるだけ、奪われるだけ。際立つのは人工知能であるはずのクララの気高さと美しさ、そして人間の身勝手さ。読むのが苦しく切なくなる小説でもありました。

 

人間とAIに違いはあるのか

ときどき思うことなのですが、私たち人間を作った神がいるのならば。我々人間は、ディープラーニング(深層学習)で成長していくAIを作ったことにより、新たな神になったのではないか、と。

シンギュラリティと言う言葉が言われて久しいですが、「人間」であることと「機械」であることの違いって、何なのでしょうね。

カタチの見えない「心」や「感情」というものが「人間」の証なのであれば、そのパターンを深く深くどこまでも模倣していくことで、AIも「心」を持つことは可能なのではないか、と思うわけです。

ならば、人間とAIの違い、というのはもはや何なのでしょうね。

 

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ドラえもんはのび太にとって唯一無二の親友

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この本を読んだときに、クララと同じような存在として、ドラえもんを思い出しました。さまざまな未来の道具でのび太を助けてくれるドラえもんは、のび太にとって代わりの効く機械ではなく、唯一無二の親友。

私たちもアニメを見る時、感情を持ったのび太と同等の存在として、ドラえもんに目線を向けている気がします。少なくとも私はそのように見ています。怒り笑い泣き不安も抱える一人の登場人物として。

 

人工知能が人間と同等の存在となるか、それとも、ただの代替えの効く機械として扱われるか。それは、あくまでも人間側の都合一つなのではないかと、そんなことを考えながら読み終えました。

『クララとお日さま』、おすすめです!!

 

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