どうも、tamaminaoです。
昨日のブログで、「今面白い本を読んでいる」と書いたのですが、それが今日紹介したい『奇書の世界史 歴史を動かす“ヤバい書物”の物語』三崎律日(KADOKAWA)。
作者の三崎律日(みさきりつか)さんは、歴史や古典の解説を中心に、ニコニコ動画やYouTubeで動画投稿を行う方。私、動画は未読なのですが、「世界の奇書をゆっくり解説」のシリーズは累計再生回数600万回を超えているそうです。ご興味のある方は、そちらもご覧になってみてください。
- 『奇書の世界史 歴史を動かす“ヤバい書物”の物語』のコンセプト
- 「世界最長の小説」に魅せられる!
- ヘンリー・ダーガーとは何者か
- 欲望と妄想が結実したダーガ―によるダーガ―だけの作品
- 大家さんが見つけだした才能
- 誰にも読まれない作品を高いレベルで描き続けること
- 最後に
『奇書の世界史 歴史を動かす“ヤバい書物”の物語』のコンセプト
「はじめに」で、この本のコンセプトが書かれているんですが、そのコンセプトが面白くて、「これは私好きかも」って予感しました。
私はむしろ、狙って「奇書」としては書かれていない書物に興味をくすぐられます。作者自身の計らいを超え、いつの間にか「奇」の1文字を冠されてしまったもの。あるいは、かつて「名著」と持て囃されたのに、時代の移り変わりのなかで「奇書」のあつかいを受けるようになってしまった本
「かつて当たり前に読まれていたが、いま読むとトンデモない本」
「かつて悪書として虐げられていたが、いま読めば偉大な名著」
1冊の本を「昔」と「今」の両面から見ていけば、時代の変遷に伴う「価値観の変化」が浮かび上がってきます。
「世界最長の小説」に魅せられる!
上のようなコンセプトのもと、様々な「奇書」が紹介されていくのですが、特に私が大変魅力を感じた1冊はこれ!!
ヘンリー・ダーガー『非現実の王国で』(正式名称は『非現実の王国として知られる地における、ヴイヴィアン・ガールズの物語、子供奴隷の反乱に起因するグランデコ・アンジェリニアン戦争の嵐の物語』)
「アウトサイダーアート」(美術に関する教育を受けていない独学者が制作する作品)の代表格ともされ、現在においても「世界最長の小説」!!
…知っている方がいらっしゃったら、「ヤバイ本紹介してくるな」って思う分野なんでしょうかね…その「ヤバさ」はこの後書きます(;^_^A
ヘンリー・ダーガーとは何者か
さて、ヘンリー・ダーガーとはどのような人物だったのか。また、この作品はどのように生まれたのでしょう。
ヘンリー・ダーガーは8歳にして児童養護施設に預けられ、いくつかの感情障害の兆候が見られたため、12歳のときに知的障害児の施設に転院させられます。しかし17歳で脱走、その後は住み込みの清掃員としてカソリック系の病院を転々とする生活を始めます。そんな彼が『非現実の王国で』の執筆を始めたのは18歳の頃。
その後81歳で亡くなる半年前まで、何と60年以上!!に渡って、彼はその作品をほとんど誰にも披露することなく、一人で書き続けます。
欲望と妄想が結実したダーガ―によるダーガ―だけの作品
『非現実の王国で』の粗筋は、子どもを奴隷として使役する悪しき国家「グランデリニア」と善きキリスト教国家「アビエニア」との戦争を描いたもの。アビエニアのプリンセス「ヴィヴィアン・ガールズ」と呼ばれる7人の姉妹が、時に勇敢に、賢く、大胆に苦難を突破していきます。
絵画の才能には恵まれなかったダーガーは、雑誌写真の切り抜きなどをトレースして挿絵を描いていたようですが、その多くは幼い少女たちが戦いに挑む様子。しばしば少女たちは全裸の状態で描かれ、股間には「未熟な男性器が」描かれていることも。これには、「ダーガーが女性の体に無知であったため」、「男性と女性の二面性を持つ少女たちを描いたもの」等諸説あるようです。
子ども奴隷の虐殺シーンがあったり、ロリータ的な様子がつまっていたり、なかなか大声で「ヘンリー・ダーガーが好きです」というのは憚られる作品、だろうと思います。
でもね、いいんですよ。当たり前なんです。だって、これは誰かに見せるために書かれた作品ではないのですから。個人が頭の中で何を考えようとそれはまったくの自由。そう、タイトル通り、“非現実”の王国、なんです。
ただ、思えば、そのような作品を今こうして世界中にさらされているというのは、彼にとって本位なのか、不本意なのか…
大家さんが見つけだした才能
さて、ダーガーの作品群は、どのようにして世に知られることになったのか。そのきっかけを作ったのは、ダーガーが救貧院に入所している際の大家さんでした。写真家としても活躍していた大家さんが、彼の部屋にあった作品を見つけたのです。
1万5000枚に及び原稿!!巨大な紙に描かれた300枚以上の挿絵!!!
ダーガー本人は、何と「遺品としてすべて処分してくれ」と言ったようですが、その芸術的な価値を感じ取った大家が、彼の死後、部屋をそのままの状態で保存したのだそうです。
ヘンリー・ダーガーの人生の最後になってようやく、私は知ったのだ。足をひきずって歩く、この老人がほんとうは何者なのか。
『ヘンリー・ダーガー非現実を生きる』(小出由紀子著、コロナブックス)より引用
誰にも読まれない作品を高いレベルで描き続けること
このエピソードを読んで感銘を受け、そして色々考えさせられたのは、多分、今私がブログを書いているから。ブログは、ネット上で発信しているわけで、当然誰かに読んでもらうことを目的としています。
しかもワードプレスではなく、はてなブログを選択。それは、スターやコメントで色々な方とやりとりでき、自分の作品を読んでもらっているという実感が感じられるからだと思うのです。つまり、「読んでもらう」ことが「書くこと」のモチベーションを支えているんですよね。まったく読んでもらえない、ってなったら……どうなんでしょう…書かないんじゃないかな、きっと。
ところが、ダーガーは、この逆。一切誰にも見せない、自分が死んだらそのまま捨ててくれ、と考えている作品を60年以上に渡って描き続け、それが、部屋を訪れた大家を一瞬で魅了するほどの芸術的な価値と驚きにあふれているわけです!!! これって、本当に奇跡的なことだと思いました。
誰かへの忖度や気遣いや評価されたい気持ちや、そういったものは一切入ってこない。本人の欲望や描きたいことやがすべて丸出し。それでいて、いや、それだからこそ?芸術的。いや、すごいですよ。
最後に
ダーガーという人物については、私、この書籍で初めて知ったもので、今後根掘り葉掘り調べていきたいと思います。
あっ!ダーガー以外にも、謎多き暗号本『ヴォイニッチ手稿』の回などもすごく面白かったです。興味のある方はどうぞご一読を。文章も難しすぎず読みやすいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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